なぜ、無料のオンライン自動翻訳では上手くいかないの?

無料オンライン翻訳サービスは、年々精度が上がり、簡単な文章なら、ほとんど正確に翻訳してくれるほどになりました。

たとえば、外国に旅行する時に、駅のホームページから、電車の運行状況についての文を翻訳したり、ホテルのレビューを翻訳したりするのには、非常に便利なツールと言えるでしょう。

しかし、アートの文章はもともと難解な表現が多く、オンライン翻訳では、まず、満足な結果は得られません。
とはいえ一番の問題は、そもそも英語がわからなければ、翻訳された英文が、正しい内容の英文になったかどうかがわからないところではないでしょうか。

そこで、その翻訳の精度をイメージするために、英語のステイトメントを、グーグルのオンライン翻訳サービスで、日本語にしてみました。

すると、ほぼ逆の意味に翻訳されてしまった文が、いくつかありました。
ここで使用したのは、私の写真作品”A Representation of Fictional War”という作品のステイトメントのこの一文です。

The images are not from our real experience of war but from the images from mass media.

グーグル翻訳では、次のように訳されました。

画像は、戦争の私達の実際の経験からではなく、マスメディアからの画像からではありません。

しかし、実際のこの文章の意味は、

そのイメージは、私たちの戦争の実体験から来るものではなく、マスメディアからきたイメージによるものなのです

となります。
グーグルが訳した「実際の経験からでも、マスメディアの画像からでもない」

本来の意味の「実際の経験からではなく、マスメディアからのイメージによるもの」
では、意味が全く違います。

また、この一文の翻訳が大きく間違っているせいで、それ以降の文章のつじつまがあいません。
せっかく海外で作品が発表されても、作家の意図が正確に伝わらないというのは、実に残念なことです。

もともと英語は、日本語と比べてはっきり明解なのが特徴です。その、はっきりした文章を翻訳しても、このように間違った訳文がでてきてしまうところを考えると、曖昧に書かれた日本文を挿入すると、翻訳精度が大幅に低下することはいうまでもないでしょう。


アートの文章をオンライン自動翻訳で正確に翻訳するには、まだまだ時間がかかりそうです。